ARTICLE 中村うさぎの人生相談

  • 不快に感じるのは、彼にとってあなたは顔のない観客になってしまったことです。

  • 2015年12月04日 (金)

人生相談のお時間です。
今回は「香苗」さんのご相談です。

 

【お名前】
香苗さん

【都道府県】
神奈川県県

【性別】
女性

【年齢】
28歳

【ジャンル】
人間関係

【相談内容】
うさぎさん、はじめまして。香苗という名前の28歳女です。
うさぎさんの著作を読むようになってから、自分がいままでぼんやりと感じていた、自己の自意識、他者の自意識というものを意識するようになりました。

そのせいもあるかもしれませんが、最近、どうにも気になってしまう男友達がいます。

その男性はいわゆるコスプレイヤーなのです。
しかし、いわゆるこれぞアニメ!という、現実離れした服装ではなく、
まぁちょっと変だけど、奇抜なファッションとも言えるよね、
というラインのコスプレをする人です。
そして、いわゆる男の娘で、
男だけど、女キャラを演じることが楽しいようなのです。

彼はもともとコミケなどコスプレが許されているイベントでのみ、
コスプレをしていたのですが、そのような場所で
「かわいい」「ちょっとエロい」「ムラムラする」
といった賞賛の声をうけていくうちに(たしかに完成度は高いのです)
コスプレイベントでもない場所(買物をする、お茶をするなど)でも、
男の娘として現れるようになっていきました。
彼はそうやって注目されることがやはり快感なのか、
一年ほど前から、キャラの模倣ではない、独立した男の娘として
異性装を楽しむようになっていきました。

そんな彼の堂々とした態度を、わたしも最初は
面白い、楽しい、勇気がある、と好意的にみていました。

しかし、最近になって、それが苦痛になってきたのです。

機会を伺っているかのように、隙さえあれば男の娘で現れる彼。
衣装についての講釈をし、わたしのメイクに対して駄目だしもするようになりました。
ツイッターに自撮りをあげ、スマホでネットの反応をなんどもチェックし、
わたしや一緒にいる友達が最近みたアニメの話などを話していても、
まるで関心がないようなのです。
(以前は、たとえ彼が見ていないアニメの話についても、
もうすこし会話に参加してくれていたのです)。

けして、わたしがなにか不利益を被っているわけではないし、
本来なら、彼が承認され自信がついたことを喜ぶべきなのかもしれないとも
おもうのですが、もやもやとした気持ちが抑えられません。

正直、所詮彼も、自分の社会的評価にしか興味ない俺様オトコと
同じなのかもしれない・・・とさえ感じてしまいます。
彼はそういうふつーのオトコとは違う、とこれまで思っていただけに、
最近の彼をみるのが苦痛でもあり、悲しくもあります。

すでに距離を起き始めている別の友人もいて、
内心では距離を起きたいと思っている自分がいるのもたしかです。

わたしはどうしたらいいのでしょうか。
うさぎさんのお考えをぜひ聞かせてください。

 

【中村うさぎの回答】

香苗さん、あなたのメールを読んで思わず笑ってしまいました。
いや、あなたのことを笑ったのではありません。
その「男の娘(←世間の人にわかりやすく言えば、要するに「女装してる男子」ですね)」があまりにも典型的なので、笑ってしまったのです。

私の周りにも、こういう人はよくいます。
まぁ、たいていゲイですが、短髪マッチョがチヤホヤされるゲイの世界では「非モテ」に属する線の細いタイプの人たちが多く、しかしひとたび女装すると「きれい!」「かわいい!」と称賛を浴びて、すっかりやみつきになってしまう。
まぁ、べつにそれはそれで本人が気持ち良ければいいと思うのですが、そのナルシシズムに歯止めがきかなくなって「かわいいあたし」に夢中になり、周りの人たちがドン引きしてるのも気づかずに「見て見て! あたしを見て!」モードに突入した挙句、「他者のいない世界」に行ってしまって友達を失くすタイプです。
私はそういう女装や男の娘を何人も見てきました。

彼らが周囲を不快にさせるのは何故でしょうか?
ナルシシズムがダダ漏れでみっともないから?

 

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