ARTICLE 中村うさぎの人生相談

  • どんなに苦しくても人は自分と向き合い戦わなくてはなりません。

  • 2014年01月27日 (月)

人生相談第四弾をお届けいたします。

今回はMさんからのご相談です。

 

【コメント登録日】
2013年11月05日 17:22

【相談者】
Mさん

【相談内容】
相談させて下さい。

 

私は、すぐ嘘をついてしまいます。
ただ、問題なのは、“嘘をついている自覚”がないことです。

人から突っ込まれて、整合性のなさに気がついた時、はじめて“あ!これ嘘だった!”と気がつき、赤面するのです。

※ちなみに、嘘の内容としては、“自分を大きく見せる系”や、“奇抜な発言をして注目をあびる系”などがあります。

これはきっと、歪んだ自己顕示欲の表れだと思うのですが、あまりにも自然に嘘をついてしまうので、自分でも嘘に気づかず、ブレーキがきか ない、後で猛烈に後悔してしまいます。

自分でも恥ずかしいと思っています。

最近は、“本当のことしか言わない”と、極力意識して過ごしているのですが、なかなか嘘つき癖が抜けません。

 

こんな自分とおさらばしたいです。
自分にも他人にも正直に、生きたい。

どうすればよいでしょうか。

 

【中村うさぎの回答】

うーむ、これは難しい! 

個人的には大変興味深い内容なんですが(私は虚言癖のある人にすごく関心があるので)、何しろ自分にそういう部分が皆無なので、どんなアドバイスをしたらいいのか見当がつかず、考え込んでしまいました。

 

まず「無自覚に嘘をついてしまう」という現象が、よくわかりません。

 

まぁ、そりゃね、できるだけ正直であろうと努力している私でも、小さな嘘はついつい日常生活でついてしまうことがありますよ。

たとえば寝坊して遅刻したくせに「道路が渋滞してた」なんて言っちゃったりね。

だけど、そんな嘘をついている時は自責の念でものすごく心苦しく、無自覚でいることなんて到底できません。

なので、最近は開き直って「すみません、寝坊しました」と言っちゃいます。
 

 

無自覚に嘘をついてしまうというのは、いったいどんな心境なんだろう。

それも、人から突っ込まれて初めて気づくなんて、よっぽどのことですよね。

というのも、他人は「あ、こいつ、嘘ついてるな」と気づいても、なかなか指摘しないからです。

まぁ、「昨日どこ行った」とか「誰と何食べた」とかって程度の嘘なら「え? こないだ言ってたことと違わない?」などとツッコまれることもあるでしょうが、あなたが自分で言ってるような「自分を大きく見せる」系の嘘は他人の目には非常に「イタい嘘」に映ってしまうので、あえて指摘しない人のほうが多いのです。

 

そういう意味では、ちゃんと指摘してくれる人が周りにいるあなたって、友人に恵まれているのかもしれませんね。

 

 
それから、ひとつわからないのは、あなたの言う「」ってのが、どの程度のものなのか、です。

つまりですね、「自分を大きく見せたい」とか「奇抜な発言をして注目を浴びたい」という動機で、ついつい話を大げさに盛ってしまうようなことは、あなたに限らず多くの人に心当たりがあると思うんです。

ま、その程度の嘘なら、私の周りにもそういう人たちが何人もいるし、こっちも「嘘つけ!」などと遠慮なくツッコむことができます。

 

あなたの言ってるのは、そういった類の嘘でしょうか? 

ならば、心配することなんかない。

それくらいの嘘なら笑ってすまして構わないと思います。

 

むしろ、そんなあなたをキャラとして面白がってくれる人もいるでしょうしね。

話を少々盛った程度で「あたし、嘘つきだ!」と自分を責めてしまうあなたは、もしかすると私よりはるかに正直者なのかもしれません。

 

ただ、これが本当に「虚言」に分類されるほどの真っ赤な大嘘だったとしたら、これはとても深刻な問題です。

あたし、芸能人と知り合いだから(本当はひとりも知り合いなんていないくせに!)」とか言う人がいるけど、これなんか典型的な「虚言」です。

あと、「実家が大金持ち(じつは大貧民だったりする)」とか、学歴詐称とか、そういう根も葉もない嘘はすべて「虚言」ですね。

あなたがそういう嘘を無自覚についてしまうのであれば、さっき言ったような「話を盛る」程度のご愛嬌ではすみません。

 

はっきり言って、それはもはや病気です。

 

私が今までに出会った何人かの虚言の人は、たいてい頭の回転が速く、ちょっとしたカリスマ性すら持っていて、常人より遥かに魅力的だったりします。

そして、揃いも揃って傲慢です。

自分の頭の良さを自覚しているので、周りがバカに見えてしょうがない。

周りは彼女(彼)の虚言に気づいていながら面白がって(あるいは、あまりにイタくて)知らんぷりをしているのですが、本人は周りが自分の嘘にころりと騙されていると思い込んで、嘘にブレーキがかからなくなります。

話はどんどん荒唐無稽になり、辻褄が合わなくなって矛盾が目立ち、それでも本人は大得意で果てしなく大風呂敷を広げ続けます。

 

こうなったら、おしまいです。

Mさん、あなたはこういうタイプですか?

だとしたら、セラピーを受けるとか、何らかの処置を取ったほうがいい。

 

無自覚に嘘をついているうちに、自分でもその嘘を信じ込むようになってしまい、最終的には人格が破綻する可能性まであるからです。

私はほとんど「人格破綻者」に近い虚言癖の人を数人知っています。

 

彼女(彼)らは、ものすごく大きなコンプレックスを抱えています。

そのコンプレックスから目を背けるために、ひたすら嘘で自分を粉飾し続けるのです。

もしあなたがこのタイプなら、まずは自分のコンプレックスと向き合う努力をしなくてはなりません。

自力では難しいでしょうから(自力で出来るくらいなら、虚言者になんてなってません)、セラピストなどの専門家の力を借りたほうがいいと思います。

 

以上が、私にできる精一杯のアドバイスです。

お役に立てなくてごめんなさい。

でも、私は心からあなたを心配しています。

 

特にあなたが本当の「虚言癖」だった場合、取り返しのつかない状態になる前になんとか救ってあげたいと本当に思っているのです。

 

どんなに苦しくても、人は自分と向き合い戦わなくてはなりません。

どうか、あなたがその強さを身につけ、己を克服できるよう祈っています。