
元からこういう顔だった。と脳の記憶が勝手に上書きされる人間って恐ろしい。
さーて、今回もまた面白いお悩みですよー。
他人が真剣に悩んでるのに「面白い」なんて言うのは申し訳ないかなとも思うのですが、でも、やっぱり面白いものは面白い。ご相談者は「バニラ子」さんという女性で、ネタは「美容整形」(←はい、私の得意分野ですねー!)なんですが、美容整形の経験があろうとなかろうと、女性なら誰でもバニラ子さんの気持ちがわかるんじゃないかな。
ま、とりあえず、彼女の悩みに耳を傾けてあげてください。
【お名前】
バニラ子
【都道府県】
宮城県
【性別】
女性
【年齢】
25
【ジャンル】
美容
【相談内容】
うさぎさん、こんにちは。いつも楽しく読ませて頂いています。うさぎさんは毎回、悩み相談を寄せた読者に「あなたも私も同じですよ」と、優しい言葉をかけてあげていますが、私の悩みに関しては多分、違うかもしれない…でもどうしても、うさぎさんの考えが知りたい…!という思いにかられ、メールをしてしまいました。今回、ご相談したいのは「美容整形が他人にバレそうで怖い」ということです。
私は25歳で、タウン誌のモデルをやっています。もともと一重まぶたで鼻が低く、地味な顔立ちでした。中学生の頃、軽い気持ちでアイプチを始めたら、「あれ?目がぱっちりするだけで、こんなに可愛くなれるんだ!」と、夢中になりました。そのうちアイプチが手放せなくなり、「アイプチする前の私は本当の私じゃない、アイプチで二重まぶたに偽装した私が、本当の私だ」と考えるように……。
中1からアイプチを始めたので、中学や高校の卒業アルバムは、偽装したパッチリ目で写っています。その「偽装した顔」が「本当の顔」だと思うようになり、19歳になったとき、ついに切開法で二重にしました。できるだけ幅は狭くしたのですが、それでもアイプチ前の一重まぶたとは、全然ちがう顔です。見る人が見たらバレます。
パッチリした二重を手に入れて、自意識が混乱するかも?と思いましたが、うさぎさんも書かれていたように、あっという間に慣れました。「元からこういう顔だった」と思うようになったのです。整形後は「美人だね、可愛いね」と言われることも増え、そのたびに少し罪悪感はありながら、「まぁ以前もアイプチしてたわけだから、人を欺いてるって意味では一緒だよね」と、自分をごまかしてきました。
そして、顔以外にも豊胸や、鼻のヒアルロン酸注入など、いろいろ経験しました。うさぎさんの本が後押しになったのもあります。うさぎさんのように赤裸々に、美容整形のメリットやデメリットを明らかにしてくださった作家は今までいなかったですし、本当に参考になりました。が、うさぎさんと私が違うのは、私が「元から美人だと思われたい」という、ズルい考えに縛られている点です……これ、自分で書いてて本当に切ないです。
プチ整形をしまくって、「美人だね」と言われることがますます増え、調子に乗った私は、元から美人だったかのような顔をしてタウン誌のモデルに応募しました。東京と比べて、そもそも若い女性の数が少ない田舎です。整形美人の私は見事に採用され、人気も出てきました。
ところが昨年の夏、ネットで、私の整形を暴露するかのような書き込みを発見してしまいました。「◯◯(雑誌名)のバニラ子、整形してる?」見たとたん、私は「ヘルタースケルター」の主人公のように、自我が崩壊するかと思いました。「いや、してないでしょ」「アイプチじゃない?」「目尻切開してるだろ」など、色んな憶測がとびかっていて、中には本当ではないものもありましたが、書き込みはどんどんエスカレート。今年になってついに、一重まぶた時代の卒業アルバムの写真を載せられてしまったのです……。すぐ削除申請しましたが、ダメでした。今も、「ブスな小学生の頃の私」が、ネット上に残っています。
相変わらずモデルは続けています。でも、あの、一重まぶた時代の写真が載ったブログが、もっと大きな掲示板に転載され、拡散してしまったら……同級生や、将来の結婚相手にバレたら……。ネットの人たちを含め、色んな人に「偽装美人」「地元でモデルやってる勘違いブス」「男を騙してる」と思われるのが恐ろしいのです。
結局、元から美人だと思われていたいのです。我ながら、ズルいし、ちっちゃい人間です。世の中には「ブス」と言われながら、整形なんてせずに頑張ってる人が沢山いる。なのに、私はなんて往生際が悪い女なんだと、考えこんで眠れない日もあります。でも、整形してまで手に入れたこの二重まぶたは、私を(一応は)モデルにしてくれました。もう自分のことを「ブス」なんて、思いたくないのです。こんな私のズルい自意識に、これからどう折り合いをつけていけば良いのでしょうか。
ご自身の整形体験を元に、沢山のご本を出しておられるうさぎさんに、こんなバカバカしいことをお尋ねするのはどうなんだ、とも思ったのですが……誰にも相談できずに悶々としております。よろしければ、一緒に考えていただけないでしょうか。
バニラ子
【中村うさぎの回答】
バニラ子さん、わかりますー!
アイプチから始まって二重まぶたの整形へと進み、「自分は元からこういう顔だった」なーんて思い込んでしまう過程、私にも痛いほど身に覚えがありますよ。
ま、私の世代にはまだ「アイプチ」なんて優れものの商品はなくて、セロテープを半月型に切ってまぶたに貼るという、原始的な方法を私は使ってましたけどね。ちなみに私の場合、片方が二重で片方が一重という非常にアンバランスな状態だったんです。それが嫌でたまらず、毎日セロテープを片方の(一重のほうの)まぶたに貼って学校に行ってましたが、それが功を奏したのか、卒業する頃にはセロテープ貼らなくても自然に二重まぶたになってました。めでたし、めでたし。
そうそう、私の友人なんかは木工用ボンドをまぶたに塗ってましたよ。今思えば、これって「元祖アイプチ」ですよねー。
ハッ、余談が長引いちゃってすみません。
あまりにも懐かしくて、つい……。
そんなわけで、バニラ子さん、あなたの悩みは世代を超えた普遍的な「一重まぶた女子の悩み」じゃないかと思います。
内藤聡子さんオレンジ色がすごく似合ってた!
私たちは「他者の承認」に己の価値を委ねてしまう。人間とはそういうものなのです。
こんなことを言うと元も子もないのは重々承知なのですが、皆さんから寄せられたご相談を読みながら、「この人たち、人生の重要事項を私みたいな人間に相談して、本当にいいんだろうか?」などと、ついつい思ってしまいます。
もちろん皆さんは、ご自分の意思で投稿されているわけですから、「この件に関する中村うさぎの意見を聞きたい」と思ってくださっているのでしょう。そう思ってくださることは大変にありがたいし嬉しいのですが、相手はあの「中村うさぎ」ですよ? 買い物だのホストだの美容整形だのに入れ揚げた挙句にデリヘルで働くようなバカ女ですよ? 本当にいいんですか?
とはいえ、自分の身につまされるようなお悩みなど読んでしまうと、やっぱり「お答えしなくちゃ」などと思ってしまう私です。
今回のご相談者「せあら」さんのお悩みは、まさにそんな内容でした。
では、さっそくご紹介しましょう。
【お名前】
せあら
【都道府県】
神奈川県
【性別】
女性
【年齢】
28
【ジャンル】
その他
【相談内容】
はじめまして、こんにちは。
私の悩みをぜひうさぎさんに聞いて頂きたく、メールしました。
私は、うさぎさんと同じで、過去に2年間ホストに貢いでいた経験があり、そのことを過去の回想録としてblogに書いています。
最初は、自分が経験してきた奇抜な事を文字にしないともったいない、という軽い気持ちで始めたのですが、有難いことに読者さんがどんどん増えて、今では毎日2万PVを超え、ジャンル別ランキングでは年間1位を獲得させてもらっています。それで、毎日読者さんから、「貴女のblogのおかげでホストの怖さを知れてホスト卒業できました」、とか、「ホストのために風堕ちするところでしたが、貴女のblogのおかげで救われました」というようなメッセージも頂くようになりました。そうしているうちに、私はだんだんと当初の、”奇抜な体験をメモっておこー”という軽い気持ちから、何だか使命感や責任感、更新しなきゃ!という焦燥感、そして義務感を持ってblogを書くようになりました。うさぎさんみたいにプロの物書きではないですし、それで生計を立てているわけでもないのに、とんだ勘違いですw
あ、これは全くもって自慢ではありませんよ!どうか誤解なさらないで下さい。
というのも・・・世の中、当たり前のことかもしれませんが、人気が出ると、同時に誹謗中傷も多くなります。最近では、前述した読者さんからの嬉しいメッセージだけではなく、心無い罵倒の言葉を浴びせられることも増えてきました。うさぎさんも、ホストに通っていた過去がおありならご存知かと思いますが、ホスラブ、というサイト等では、もう本当にひどいです。じゃあ、blog止めればいいじゃん?ってお思いになると思うのですが、前述した、謎の使命感があって止められず・・・私が自分のバカな過去を赤裸々に晒すことで、1人でも誰かが救われているのであれば、頑張って続けたいと思っていて、でも同時に、誹謗中傷で嫌な思いをするのはもう嫌だとも思ってしまい、日々悶々と考えています。。。
うさぎさんは、私がどうすればいいと思いますか?
また、「そんなの自分で考えろ!」って仰るなら、うさぎさんが誹謗中傷に合われた場合、これまでどう対処されてきたか、何か少しでもいいのでアドバイス頂けたらと思っています。
長くなってしまいすみません(>_<)どうぞ、よろしくお願い致します。
【中村うさぎの回答】
せあらさん、私もまったくあなたと同じです。
最初は「ウン十万円もするシャネルのスーツを着ていながら、水道代も払えずに水を止められた話」とか「住民税も払えずに滞納した挙句、区役所の滞納整理課から差し押さえを食らった顛末」とか、そういうバカバカしくも稀有な体験を、飲み屋で友人たちと「聞いて聞いて! こんなことがあってさぁ~」などと笑い話に興じるような感覚でエッセイに書き始めました。
現在の私がプロのエッセイストなのは、べつにそのエッセイが秀逸だったわけでも何でもありません。ただ、その前からプロの物書き(ファンタジー小説家)だったので、たまたま連載する媒体を与えていただけただけです。せあらさんと私の間には、何の違いもないのです。


