ARTICLE 中村うさぎの人生相談

  • 働く事が向いてない人間って、いるもんです

  • 2014年02月07日 (金)

やってまいりました、人生相談のお時間です。

 

今回は「みき」さんからのご相談です。

 

何度もしつこくて恐縮ですが、この「人生相談」は将来的に電子書籍化される予定です。「電子書籍なんかに自分の人生相談を載せられたくない!」とか「もし載るのなら名前変えて欲しい」という方は、その旨、ここのサイトにご連絡くださいね。

よろしくお願いいたします。

 

では、人生相談を始めましょう。

 

【コメント登録日】
2013年11月06日 03:25

【相談者】
みきさん

【相談内容】
今、39歳です。
実は、10年ぐらいずっと無職です。
生きてる事が恥ずかしくて、人と会えず、友人関係も全て断ち切ってしまいました。
原因は色々あり過ぎるのですが、1番は対人関係です。
昔から人とうまく付き合えず、疎外感を感じて生きてきました。
新しい職場が怖くて、求人票を見るのも恐怖で前に進めません。
何かしなきゃいけない焦りばかりで、相談できる人もいなくて、どうしたら良いのか毎日気が狂いそうです。

 

【中村うさぎの回答】

「生きてることが恥ずかしい」という言葉に衝撃を受けました。

 

対人関係の悩みは多くの方々が抱えてらっしゃることと思いますが(ていうか、職場の悩みの大半は対人関係でしょう)、どうやらそういうのとは深刻さの度合いが桁違いのようですね。

10年も無職で、求人票を見るのも恐怖だとは、さぞかし辛い想いなのだろうとお察しします。

想像するだに地獄の苦しみなんでしょう。

 

でもね、ひとつだけ言わせてくださいね。

ちょっと耳が痛いかもしれませんので、ここから先は嫌なら読まなくて結構です。

 

あなたのご相談を読んでいて、じつに不思議なのは、10年も無職で、どうやって生活していらっしゃるのか、ということです。

普通はとっくにホームレスか生活保護になってる状況です。

が、文中からは、そんな様子は伺えません。ホームレスならネットで人生相談なんてできないでしょうしね。

 

たとえばご実家暮らしでご両親が面倒を見てくれているとか、そういう状況なのでしょうか?

もし生活に困っていないのなら、そんなに苦しい想いまでして働く必要があるのかと、私などは考えてしまいます。

 

ずいぶんと脳天気な返答だと思われるでしょうね。

でもね、もしもあなたが「働かなきゃ一人前じゃない」とか「自立してなきゃ人間として最低だ」などと自分を責めて追い詰めてるんだとしたら、事態はますます袋小路に迷い込んで悪化し、だから一歩も前に進めなくなるんだと思うんですよ。

 

もしかするとあなたは「対人恐怖」とか、そういう病なのかもしれません。

だとしたら、無理やり職場に身を置いてストレスを溜めると、もっと悪化する可能性だってあります。

今だってじゅうぶんに苦しいんでしょう? 

これ以上、苦しむ必要なんてないじゃありませんか。

そんなに自分を苛めてはいけません。

 

あなたの経済状況がよくわからないので、もちろん、滅多なことは申し上げられません。

もしかしてすごく経済的にも行き詰ってらっしゃるのかもしれませんね。

だとしたら、職場探しの前に役所で生活保護の相談をするのが先決でしょう。

 

人は生活のために働くのです。

私だってそうです。

働かなくても暮らしていけるなら、文章なんか一生書かないかもしれません。

でも、それじゃ食っていけないから、仕方なく、凡庸な脳ミソを振り絞って必死で物書き稼業を続けているわけです。

 

でも、養ってくれる人がいるとか、莫大な貯金があるとか、経済的な問題が特にないのなら、このまま無理して働かずにブラブラしててもいいんじゃないかな? 

だって、明らかにあなたは、複雑な対人関係の中で働くのが向いてないんだもの。

向いてないことを無理してやる必要なんかありませんよ。

たった一度のあなたの人生を、辛いことや苦しいことに費やす必要はありません。

 

働くのが辛いから働かない」なんて言うと、世間の人は「甘えんじゃねーよ」などとあなたに言うかもしれません。

でも、そんなの、ちっとも恥ずかしいことじゃありません。

 

働くのが向いてない人間って、いるもんですよ。

 

たとえばうちの夫なんか、そういうタイプです。

だから私が養ってるんです。

それでいいじゃありませんか。

人は自分に向いている生き方を選択すればいいんです。

赤の他人が何と言おうと、関係ありません。

 

もう少し、自分を許してあげてください。

これ以上、自分を責めたり追い詰めたりしないであげてください。

そうしないと、あなたはもっともっと生きるのが苦しくなりますよ。

 

そして、たとえば働けない理由が心の病ならばセラピーを受けるとか、そのせいで経済的に困窮して生活保護を受ける必要があるなら役所に相談するとか、もっと専門家を活用する道を模索してください。

 

私に言えることは以上かな。

お役に立たなかったら、ごめんなさい。