ARTICLE 中村うさぎの人生相談

  • 世の中、そうやって「住み分け」をするのが平和な解決方法だと私は思っています。

  • 2017年05月23日 (火)

人生相談のお時間です。
今回のご相談者は「テンゾウ」さんです。

 

【お名前】
テンゾウさん

【都道府県】
神奈川県

【性別】
男性

【年齢】
29

【ジャンル】
その他

 

【メッセージ本文】
「自分は「ドラクエX」が大好きなゲイです。

人生相談とはちょっと違うのですが、先日、

『同性愛者を入店させないで』と投書した客に『もう来ないでください』。お店の回答にTwitterで称賛の声集まる
http://bit.ly/2qR7SHe
という記事がニュースに上がりました。

私はこの記事に非常に違和感を覚えました。
このニュースに対する大半の意見は「こういう会社で働きたい」とか「素晴らしい会社(上司)だ」のようでしたが、自分はゲイなのにまったくそう思えませんでしたし、店側のことをまったく称賛できませんでした。

日本人はこういう苦情に対してオブラートに包んだり、やんわり濁した回答をすることが通例ですが、それを感情を露わにばっさり切ってるところが新鮮で盛り上がってるだけと第一印象を受けました。

お客様の「そういうお店ってこともインターネットに流します」って最後の一文はいわゆる「脅し」だからこれは書いてはいけないことだと思います。
が、「男同士が手をつないで出てきて気持ち悪い」って感じてしまうから店側に何か対処してくださいっていうのは、たとえば「タバコの匂いが不快だからどうにかしてください」っていうのとそんなに変わらないんじゃないかな?と思いました。

一応「個人の意見」としてお客様に返答を出すわけではなく「企業の意見」として出してるわけだから、「あなたはもう来ないでください」って言っちゃうのは、どんなに怒りが込み上げててもダメだと思いました。

「皆さま大切なお客様です」って「平等」を強調してるのに、「もう来ないでください」って、このクレームを言ったお客を完全に切ってる点も、なんか腑に落ちません。
個人対個人のディベートだったら、この会話はありだと思います。
このクレームを言ったお客は、後日店に謝りに来られたらしいのですが、それもそれで変な話だと思います。「ネットに流すぞ」って脅しに対しての謝罪は必要と思いますが。

この会社はLGBTに理解ある会社ということは文面からわかるんですが、そっちに肩入れし過ぎて、まず企業としてのこの回答は本当に正しいのか(称賛に値するのか)疑問です。お客様が何を不快に思われるかは人それぞれなんで。それに対して真摯に向き合う姿勢がこの文章から一切感じられません。

男同士で手をつないでるのを見て「気持ち悪い」って思ってしまうのは全然差別じゃないと思うんです。個人的に。

自分ゲイですが。

ただ、それを見て、からかったり嫌がらせをしたら、それは差別です。

違和感の正体なんですが、個人の思想は自由です。まず、このお客様は気持ち悪いってことを店側に投書として伝えただけ。まだ思想の段階(たぶん?)です。なのに、さもあからさまな侮辱(差別)を直接この男同士カップルにしたかのように、店側は「もう、うちの店来るな」って言ってるのでなんか変です。

もし、店頭で男カップルに「見てて気持ち悪いから他の店行って欲しい」みたいなことを直接言ったのなら、店側は「あなたのようなお客様はもううちの店来ないでください」って言ってもOKと思うんです。それはめちゃくちゃかっこいいと思うんです。

追記:自分ゲイですが、こうゆう記事を通してLGBTが社会に理解されるきっかけになるのは確かにありがたいと思う反面、別のところで論点ずれて盛り上がってしまったり、なんかネタにされてる気もして、悲しいです。こういう記事が上がるってこと自体が、まだ社会に偏見や差別があるってことですからね。

中村うさぎさんはどう思われますか?

【中村うさぎの回答】

まず最初に謝らなくてはなりません。
せっかくニュースのURLを貼ってくださったのに、私はそのニュースを見ることができませんでした。
何故なら人生相談はプリントアウトした状態で手渡してもらってるので、クリックできないんですよ。
しかもアナログ人間なので、ニュースを検索して見つけることもできませんでした。
なので、ニュースを読んでない状態で、あなたの質問にお答えします。
もし私の理解不足や解釈に誤解があったら、本当にごめんなさい。

客側がどんな投書をしたのか、店側がどういう言葉で返事をしたのか、そのあたりの正確な情報を把握してない状態でお答えするのもアレなんですが、店側が「ゲイカップルが不快なら当店には来ないでください」というのは私の感覚では間違ってないと思います。
何故なら店には、客を選ぶ権利があるからです。

あなたの言うとおり、これは「タバコの煙が不快」問題と一緒です。
だから、とりあえず差別か否かは置いといて、「人は自分の快・不快をどこまで他者に強要できるか」という問題として考えましょう。
タバコの煙を不快に思うのは、個人の自由です。
なので、タバコの煙が大嫌いな人は、喫煙可のレストランに行かなければいい。
逆に私のようなヘビースモーカーは、禁煙レストランには絶対行かない。
世の中、そうやって「住み分け」をするのが平和な解決方法だと私は思っています。
そして、「喫煙可」にするか「禁煙」にするかは、その店が決めればいいことです。
「うちはタバコのお客さんもOK」と店が決めたのであれば、禁煙派のお客さんから「タバコの煙が不快なので対処してください」と言われても、「それはうちの方針なので、そんなにご迷惑なら禁煙レストランに行ってください」と答えるのは至極妥当に思えます。

 

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