人生相談のお時間です。
今回のご相談者は「ゲイママ」さんです。
【お名前】
ゲイママさん
【都道府県】
東京都
【性別】
男性
【年齢】
40
【ジャンル】
仕事
【メッセージ本文】
ゲイバーでママをやってる者です。
こういう仕事してると、お客さんから人生相談とか恋愛相談とかされる機会がめちゃくちゃ多いんですけど、いつも悩んでしまうのです。
水商売なので、本当のことをズバリと言うよりも、相手の言って欲しい言葉を言ってあげるようにしてるんですけど、はたしてそれでいいのか、とか。
最近はメディアを見てゲイバーに来るノンケの男女が多いんですが、そういう人たちってマツコやミッツの影響なのか、みんな『ゲイに叱られてみたい』という願望を持ってるわけです。
だから期待に応えて『あんたのここがダメなのよ!』とか大袈裟に叱ったりもするんですけど、心の底から言ってるかというと、やっぱり接客業なので本心ではないんですよね。
特にノンケから不倫の相談なんかされて『人前で堂々と付き合えなくて辛い』なんて愚痴を言われると、心の中で『何言ってんのよ! 私なんかホモだから、人前で堂々と手を繋いだりイチャイチャすること自体があり得ないのよ! たかが不倫くらいで何をゴチャゴチャ言ってんの。その気になれば人前でイチャイチャできる身分のくせに!』なーんて思ったりするんですが、そこは口に出さずに『大変ねぇ。かわいそう』などと言ってる自分がいるわけです。
一番面倒くさいのは『誰にも言わないでね』という条件付きの相談です。
共通の知り合いがいて、その相手にも秘密にするわけなので、かなり精神的な負担が大きいです。
でも、もちろん約束したのですから、私は秘密を守ります。
ところが、そういうことを言う人に限って、自分の秘密を他の人にもペラペラ喋って、最終的に公けになっちゃうんですよね。
しかも『ママにもずっと前から相談してたの』なんて言うもんだから、私がじつは知ってて誰にも言わなかったことまでバレちゃって、結果、共通の知人を裏切ったかのような印象を与えてしまう。
なんだかなぁ、と思いますが、それも『水商売あるある』なんでしょうね。
でも、正直、そんなママ業にも疑問があるというか、好きでやってる仕事なんですが、これでいいのかという自問自答が常に頭の隅にあります。
客の悩みにどこまで真摯に向き合うか、店の売り上げだけを考えて適当に喜ばせておけばいいのか……どう思われますか?
【中村うさぎの回答】
私は水商売の経験も少ないし、そもそも水商売に向いてないので、的確なアドバイスができるかどうか、わかりません。
ですが、もし私が店ママなら、客の相談には本気の言葉しか返さないと思います。
というのも、その人たちが何を求めて私に相談するのか……まずは、そこから考えるからです。
自分の聞きたい言葉を言ってもらうだけなら、わざわざ金払って飲みに来てまで相談するでしょうか?
そんな言葉なら、周りの友だちがいくらでも言ってくれますよ。
私に相談するからには、正真正銘、偽らざる「私の言葉」を聞きたいからだと解釈します。
だから、私も他の誰でもない「私の言葉」で答えるのです。
おそらく、あなたに相談するお客さんたちも、「あなたの言葉」を聞きたいのだと思います。
いい気持ちにして欲しいのではなく、真摯な言葉を求めているからこそ、ノンケのくせにわざわざゲイバーなんかに来るんじゃないでしょうか?
お世辞が欲しければ、ゲイバーには行きません。
あなたもおっしゃっているとおり、世間一般の人たちはゲイに「厳しいけど愛のある毒舌」を期待している。
そこらへんの飲み屋の女将と同じ言葉を求めてはいない、ということです。
「相手の聞きたい言葉を言ってあげるのが水商売」とあなたは考えているようですが、それはただの水商売一般の話で、ゲイバーという特殊な水商売には必ずしも当てはまらないと私は思います。