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明日8/4(金)配信分より、人気コーナー「女王様のご生還」の冒頭部分を少しだけご覧ください!

 

「平等」であればあるほど人は些細な差異に拘泥して他者を妬んだり憎んだりすることになる。

 

 最近、あんなにハマっていた「ドラクエ」を全然やってない。まぁ、飽きてきたというのもあるが、何よりネットゲームをやっていると自分が嫌いになるからだ。

 私はもともと負けず嫌いで嫉妬深く、自分より弱い者には優しくしたりもするけど(しかし、そこには絶対に「見下し感」がある)、自分と同等かちょっと上くらいの相手には激しいライバル心を燃やす。

 そのライバル心がポジティヴに働けば「もっと頑張らなきゃ!」という向上心に繋がるのだが、退院していろいろあって精神状態がやたらネガティヴ方向に向かうようになってからは、他人のちょっとした言動に僻んだり妬んだりして、我ながら本当に嫌なヤツになってしまった。

 ネットゲームの世界には、こういう人が多い。
いや、ネトゲに限らずリアルにもいるのだが、とにかく私が不思議に思うのは、彼らがそんな自分に嫌気がささないのか、という点である。彼らは自分の真っ黒な嫉妬心にも無自覚な様子で、他人のことをこきおろしたりバカにしたりして己の優越感を保っている。そして私は、自分がそういう人間になってしまうのが怖くて、ネトゲから距離を置いている状態だ。

 「ドラクエ」がネトゲでなかった時代には、ゲームでこんな精神状態になることはなかった。
やはり「他者の存在」が私を脅かすのだと、つくづく感じている。他者のいるゲームは、もちろんひとりでやるゲームより楽しい面もたくさんあるのだが、いったん「他者との比較」モードに入ってしまうと、はてしなく心がねじ曲がっていく。

 もちろん、これは多分に私の性分のせいで、ネトゲをやっていても他人と自分を比べて優越感や劣等感を抱かず、平和に楽しんでいる人たちもいるのだ。彼らが何故そんなに心穏やかでいられるのか、私にはわからない。本当に、心の底から羨ましい。彼らにそれを尋ねると「だって、たかがゲームじゃん」と笑って答えるのであるが、私はただのゲームでも熱くなってしまう。人より少しでも劣っていることが、すぐに劣等感や自己嫌悪に結びついてしまうのである。

 誰か、この救いがたい「負けず嫌い女」を何とかしてくれ。

 ところが、そんな私なのに、これまたどういうわけか、トランプや麻雀などのゲームで負けることがまったく悔しくない。

 

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