ARTICLE 中村うさぎの人生相談

  • マイノリティの孤独のほうが、わかりやすい分、マジョリティの孤独よりずっとマシかもしれません。

  • 2014年03月26日 (水)

皆さん「人生相談」のお時間がやってまいりました。
今回は「えいひれ」さんという20代の女性のお悩みです。

 

【お名前】
えいひれ

【都道府県】
東京都

【性別】
女性

【年齢】
22歳

【ジャンル】
人間関係

【相談内容】
私は親友のことが大好きです。ただ、好きすぎて辛いことが最近あり悩んでいます。親友に対して恋愛感情に似た独占欲のようなものがでてきて、彼女にとって一番の人でありたいと思うようになってしまいました。他の誰よりも私を頼ってほしいし私に甘えてほしいという気持ちを抱くようになってしまったのです。私には彼氏もいますし、彼女以外にも親しい友人も多く、家族関係も良好で、基本寂しい思いをすることもない恵まれた環境にいます。それにもかかわらず、彼氏以上に彼女に会いたいと思うくらい特別な感情があるのです。こんなこと初めてです。彼女も私を親友と思ってくれていますが、私の思いがここまで強いことには気づいていない状態です。この感情は何なのか、そしてどう処理すべきか、うさぎ先生に御指南していただきたいです。

 

【中村うさぎの回答】

えいひれさん、それは立派な恋愛感情です。

あなたは親友に恋しているのですね。

いいことじゃありませんか。

恋する気持ちが持てるなんて、婆さんの私には羨ましい限りですよ。

 

あなたはご自分が同性に恋するなんて信じられないかもしれません。

 

何しろ、あなたには彼氏もいるんだもの。

でも、その彼氏よりも彼女に会いたいなんて、これが恋愛じゃなくて何なんでしょう?

あなたはバイセクシャル、あるいはレズビアンなんですよ。

まずは、そのことを受け容れてください。

そこをクリアしないと、あなたは今の苦しみから、一歩も外に出られません。

 

ご存知のように、同性愛者というのはマイノリティ(少数派)です。

世の中はマジョリティ(多数派)で成り立っているので、マイノリティはそれだけで自分が世間から弾き出されたような不安を覚えます。

 

自分はまともな人間じゃないのか?

こんな変な人間になってしまって、親に顔向けができないのではないか?

周りの人間は、こんな自分をどう思うだろう?

自分のような人間は、これからどうやって生きていけばいいのか?

本当の自分を隠し続けて生きるのは辛いし、だからといって隠さずに生きることなんてできるのだろうか?

本当のことを言った途端に、家族も友人も失ってしまうのではないか?

 

マイノリティとして生きることは、「孤独」を意味します。

家族や友人に恵まれて生きてきたあなたには、その「孤独」はさぞかし不安で恐ろしいものでしょう。

今まであなたを包んできてくれた周りの人々の笑顔は、あなたがマイノリティであることを知るや一瞬にして凍りつき、あなたから顔を背けてしまうかもしれません。

そんな光景を想像するだにあなたは恐怖と不安に襲われ、きっと「自分はそんな孤独には耐えられない」と思うでしょう。

 

でもね、えいひれさん。

人間は基本的に「孤独」な生き物なのですよ。

マジョリティの王道を歩んで、何不自由なく生きているように見える人たちだって、その心の裡には壮絶な「孤独」を抱えている……そんなことは、よくあることです。

 

あなたはまだ若いから、他者の孤独が見えてないだけなのです。

あなたの家族や友人たちだって、その心の芯には、永遠に溶けない氷のような孤独を抱えているのかもしれない。

 

そう考えると、マイノリティの孤独のほうが、わかりやすい分、彼らの孤独よりもずっとマシかもしれません。

何故ならマジョリティたちは、己の孤独の本質が見えてこないため、より一層苦しむことになるからです。

 

マイノリティであれば、「自分が孤独なのはマイノリティだからなのだ」と、いっそ諦めがつくものです。

とはいえ、新宿二丁目のようなゲイタウン(そこでは同性愛者こそがマジョリティであるという奇妙な逆転現象が生まれています)に足を運んでご同胞たちに囲まれてみても、「やっぱり自分は孤独だ」と思い知る羽目になったりもするんですけどね。

 

えいひれさん、今のあなたに必要なのは、「孤独」に向かって一歩踏み出す勇気です。

自分がマイノリティであるがゆえに孤独なわけではない、人間は誰しも孤独なのだということを知って、これから始まる本物の「孤独」との付き合い方を考えていく。

その姿勢は、きっとあなたを大人に成長させてくれることでしょう。